新世界訳
エホバの証人の聖書

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ヨハネ 17:11-12

◇ 新世界訳参照資料付き聖書 ◇ (エホバの証人)
「そしてまた,わたしはもう世におりませんが,彼らは世におり,わたしはみもとに参ります。聖なる父よ,わたしに与えてくださったご自身のみ名のために彼らを見守ってください。わたしたちと同じように,彼らも一つとなるためです。わたしは,彼らと共におりました時,わたしに与えてくださったあなたご自身のみ名のために,いつも彼らを見守りました。そしてわたしは彼らを守り,滅びの子のほかには,そのうちだれも滅びていません。それは聖句が成就するためでした。

◇ 新共同訳聖書 ◇ (カトリックとプロテスタント)
わたしは、もはや世にはいません。彼らは世に残りますが、わたしはみもとに参ります。聖なる父よ、わたしに与えてくださった御名によって彼らを守ってください。わたしたちのように、彼らも一つとなるためです。わたしは彼らと一緒にいる間、あなたが与えてくださった御名によって彼らを守りました。わたしが保護したので、滅びの子のほかは、だれも滅びませんでした。聖書が実現するためです。

◇ 新改訳聖書 [第三版] ◇ (ファンダメンタル)
わたしはもう世にいなくなります。彼らは世におりますが、わたしはあなたのみもとにまいります。聖なる父。あなたがわたしに下さっているあなたの御名の中に、彼らを保ってください。それはわたしたちと同様に、彼らが一つとなるためです。わたしは彼らといっしょにいたとき、あなたがわたしに下さっている御名の中に彼らを保ち、また守りました。彼らのうちだれも滅びた者はなく、ただ滅びの子が滅びました。それは、聖書が成就するためです。

◇ 新世界訳参照資料付き聖書英語版 (NW/Reference Bible) ◇ (エホバの証人)
“Also, I am no longer in the world, but they are in the world and I am coming to you. Holy Father, watch over them on account of your own name which you have given me, in order that they may be one just as we are. When I was with them I used to watch over them on account of your own name which you have given me; and I have kept them, and not one of them is destroyed except the son of destruction, in order that the scripture might be fulfilled.



 ここでは代名詞の取り扱いが問題になるようです。

 聖書原典で「あなたの名」という表現が二度繰り返されているところ、邦訳聖書では多様な訳し方が見られます。新世界訳聖書は「あなた」を一回省いています。新改訳聖書も一回、新共同訳聖書は二回とも省いています。これはどうしてなのでしょうか。
 邦訳聖書においては、代名詞を逐一訳出することはくどいと考えらるようです。そのような考えのもとに省略が行われたのでしょう。
 新世界訳聖書はここで用いられている代名詞を再帰代名詞の代用だと考えたようです。そのうえで、英訳聖書には再帰代名詞を訳出する際に“own”を付けるという考え方がありますから、その規則に従い、「自身」という語を補ったようです。



◇ 「新約聖書のギリシア語文法」, 織田昭

再帰代名詞の役割を人称代名詞の斜格が果すこともある。






 ちょっとややこしいですが、この句には代名詞にかかわるもう一つの相違点があります。



ヨハネ 17:11-12

◇ 新世界訳参照資料付き聖書 ◇ (エホバの証人)
「そしてまた,わたしはもう世におりませんが,彼らは世におり,わたしはみもとに参ります。聖なる父よ,わたしに与えてくださったご自身のみ名のために彼らを見守ってください。わたしたちと同じように,彼らも一つとなるためです。わたしは,彼らと共におりました時,わたしに与えてくださったあなたご自身のみ名のために,いつも彼らを見守りました。そしてわたしは彼らを守り,滅びの子のほかには,そのうちだれも滅びていません。それは聖句が成就するためでした。

◇ 新共同訳聖書 ◇ (カトリックとプロテスタント)
わたしは、もはや世にはいません。彼らは世に残りますが、わたしはみもとに参ります。聖なる父よ、わたしに与えてくださった御名によって彼らを守ってください。わたしたちのように、彼らも一つとなるためです。わたしは彼らと一緒にいる間、あなたが与えてくださった御名によって彼らを守りました。わたしが保護したので、滅びの子のほかは、だれも滅びませんでした。聖書が実現するためです。

◇ 新改訳聖書 [第三版] ◇ (ファンダメンタル)
わたしはもう世にいなくなります。彼らは世におりますが、わたしはあなたのみもとにまいります。聖なる父。あなたがわたしに下さっているあなたの御名の中に、彼らを保ってください。それはわたしたちと同様に、彼らが一つとなるためです。わたしは彼らといっしょにいたとき、あなたがわたしに下さっている御名の中に彼らを保ち、また守りました。彼らのうちだれも滅びた者はなく、ただ滅びの子が滅びました。それは、聖書が成就するためです。

◇ 新世界訳参照資料付き聖書英語版 (NW/Reference Bible) ◇ (エホバの証人)
“Also, I am no longer in the world, but they are in the world and I am coming to you. Holy Father, watch over them on account of your own name which you have given me, in order that they may be one just as we are. When I was with them I used to watch over them on account of your own name which you have given me; and I have kept them, and not one of them is destroyed except the son of destruction, in order that the scripture might be fulfilled.



 聖書が書かれたギリシャ語には代名詞が隠れてしまうという特徴があり、ここで問題となっている代名詞は隠れています。このような場合、英訳聖書においては隠れた代名詞を復元しないと訳文がうまく組み立てられないことが多いですから、規則的に復元が行われることになっています。一方、日本語にはそのような制約があまりありませんので、復元したり、しなかったりします。新世界訳聖書日本語版は隠れている代名詞を復元しませんでした。






 この句について反対者の岩村義男氏はこのように指摘しています。



◇ 「神のみ名は「エホバ」か」, 岩村義男, いのちのことば社

 11節の「わたしに与えてくださったご自身のみ名」と、12節の「わたしに与えてくださったあなたご自身のみ名」は、『新世界訳』英文では同じ表現です。ギリシャ語本文から直接訳していればこんな初歩的なミスはくり返さずにすんだはずです。字義的には「あなたがわたしに与えてくださったあなたのみ名」なのです。



 岩村氏は、新世界訳聖書の日本語版はその英語版からの重訳であり訳業にあたってギリシャ語原典は参照されていない、この句はその一例である、と主張しています。もしそうなら、英語版と日本語版とは訳文がそろうはずです。この句の場合、英語版から直接に翻訳することは避けられているようです。

 さらに岩村氏はこのようにも述べています。



◇ 「神のみ名は「エホバ」か」, 岩村義男, いのちのことば社 (表記修正)

 イエスはだれのみ名を明らかにされたのでしょうか。11節と12節からそれは判断できます。……イエスは、(神の名ではなく)ご自分のみ名を明らかにされたのです。「わたしに与えてくださったご自身のみ名」とは、文字のとおりにとれば、「エホバ」ではなく「イエス」です。



 ついさきほど岩村氏は、新世界訳聖書の「わたしに与えてくださったご自身のみ名」という訳は「あなたの」が欠落していて問題であると指摘したばかりですが、そのようなことはすぐに忘れてしまったようです。