新世界訳
エホバの証人の聖書

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使徒 20:28

◇ 新世界訳参照資料付き聖書 ◇ (エホバの証人)
あなた方自身と群れのすべてに注意を払いなさい。[神]がご自身の[み子]の血をもって買い取られた神の会衆を牧させるため,聖霊があなた方をその[群れの]中に監督として任命したのです。

◇ 新改訳聖書 [2017年版] ◇ (ファンダメンタル)
あなたがたは自分自身と群れの全体に気を配りなさい。神がご自分の血をもって買い取られた神の教会を牧させるために、聖霊はあなたがたを群れの監督にお立てになったのです。



 新改訳聖書では「神の血」を意味しているところが、新世界訳聖書では「神の子の血」の意味になっています。
 エホバの証人統一協会対策香川ネット正木弥氏による「ものみの塔の新世界訳聖書は改ざん聖書」は新世界訳聖書をこのように批判しています。



◇ 「ものみの塔の新世界訳聖書は改ざん聖書」, 正木弥 (表記修正)

新世界訳(日本語訳)には「[神が]ご自身の[み子]の血をもって買い取られた…」とあります。[神が]の部分は[ ]なしで、「神がご自身の血…」と訳すべきで、[ ]はいりません。問題は[み子]ということばを挿入していることです。ギリシャ語本文にも逐語訳(英文)にも”み子の”を訳出する根拠が全くありません。ところが、新世界訳(英文)のこの文の語尾に突然[Son]がつけ加えられました。新世界訳・日本語はこれを引き継いだわけです。これは、全くのつけ足しです。
血を流されたのは勿論イエス様です。なのに、”神ご自身の血で買い取られた”となると、イエス様=神様、ということになるではありませんか。「イエスは神ではない」という教理をもつものみの塔・エホバの証人にはこれが都合が悪いのです。都合が悪いから聖書を変える、そんなことでいいのでしょうか。



 この聖句は三位一体論者たちにとって大切な句の一つです。
 キリスト教において主流となっている三位一体論では、イエスは神であるということが定義されています。そしてこの聖句は、イエスが神であることを証明する句の一つであるとされています。一方、エホバの証人は原始キリスト教の復興を目指していますから、原始キリスト教にはなかった三位一体論を受け入れることができません。
 ここで問題となっているのは、原始キリスト教の著作である新約聖書において、神とイエスが同一であると読める記述があることです。三位一体の教理を支持する現代のキリスト教にとってこの句は問題になりません。しかし、学問的見地から見るとこれは問題です。いま述べたように、原始キリスト教には三位一体の考え方などなかったからです。

 エホバの証人はこの訳についてこのように説明しています。



◇ 参照資料付き新世界訳聖書, 付録, 「ご自身のみ子の血をもって」 (表記修正)

 文法的に言えば,この句は,ジェームズ王欽定訳やドウェー訳がしているように,「ご自身の血をもって」と訳すことができるでしょう。これは多くの人にとって難解な句とされてきました。アレ写,エフ写,ベザ写,シリ訳ヘ(欄外)(モファットの訳はこれらに基づいている)が,「神の会衆」とではなく,「主の会衆」と読んでいるのは恐らくそのためです。本文をそのように読むなら,「ご自身の血をもって」という読み方には少しの困難も伴いません。しかし,シナ写,バチ写,ウル訳は「神」(定冠詞を伴う)と読んでおり,ここを普通に訳せば,『神の血』となります。
 「血をもって」という句のあとに, τοῦ ἰδίου(トゥー イディウー)というギリシャ語が続いており,この句全体は「ご自身の血をもって」とも訳せます。この「ご自身」という語のあとに単数形の名詞が省かれているものと考えられます。それは,恐らく,神と最も近い関係にある,独り子イエス・キリストであると思われます。J・H・モールトンは「新約ギリシャ語文法」(A Grammar of New Testament Greek,第1巻[序文],1930年版,90ページ)の中でこの点にふれ,次のように述べています。「 ἴδιος(イディオス)について話を終える前に,明確に示された名詞を伴わない ὁ ἴδιος[ホ イディオス]の用法について述べておかねばならない。これはヨハネ 1:11 ; 13:1,使徒 4:23; 24:23に見られる。我々はパピルスに,近い関係にある者に対する愛称語としてこうした単数形の用いられている例を見いだす。……Expos.VI.iii.277ページで,わたしはあえてこのことを取り上げ,使徒 20:28を『ご自身のものである方』と訳したいと思う人々(B・ワイスを含む)への励ましとした」。
 ホートも,「ギリシャ語原語による新約聖書」(The New Testament in the Original Greek,ウェストコットおよびホート編,第2巻,ロンドン,1881年,付録,99,100ページ)でこう述べました。「現在あるすべての文献に影響を及ぼすようなごく初期の写しを作るさい, ΤΟΥΙΔΙΟΥ[トゥー イディウー,『ご自身の』]のあとの ΥΙΟΥ[ヒュイウー,『み子の』]が脱落したと考えられなくはない。これを挿入すればこの句は少しも難解でなくなる」。
 新世界訳聖書はこの句を字義通りに訳出し ,ἰδίουのあとに角かっこに入れた「み子」を加えて,「ご自身の[み子]の血をもって」と読んでいます。



 資料は二つの可能性を指摘しているように見えます。一つは、聖書ギリシャ語には省略ということが多いという点です。「私の子」という表現を考えてみましょう。聖書ギリシャ語には、それが「子」であることが自明であるという認識があると、「子」は省略され、単に「私の」と言って済ませてしまうという傾向があります。このことを考えると、この表現は自明である「子」が省略されたものであるに違いないということが言えそうです。
 もう一つは、どうやら綴りの問題のようです。新約聖書は当初、ギリシャ語の大文字のみを用い、空白を挟まずに書かれました。ですから、「ご自身のみ子」は ΤΟΥΙΔΙΟΥΥΙΟΥ と綴られたことになります。新約聖書の綴り方には見通しが悪いという欠陥があって、そのせいで写しを作る際に間違いが生じやすいということが考えられます。ここでは末尾の ΙΟΥ がその手前にもあることが問題です。写しを書いている時に視点を戻す先をすこし間違えると、ΥΙΟΥ を飛ばしてしまいやすいということです。あるいはもしかすると発音が絡んでいるかもしれません。この綴り、最後の ΙΟΥΥΙΟΥ はすべて母音です。これは発音しづらいですので、現代ギリシャ語では普通にやるように、発音が省略されたということが考えられます。写しを作る際に朗読者を使った場合を考えると、ここは ΥΙΟΥ が抜けやすいということが言えるのかもしれません。

 エホバの証人の主張については、資料が述べているように、多くの学者の支持があります。新共同訳聖書もこれらの指摘と同意見のようです。



使徒 20:28

◇ 新共同訳聖書 ◇ (カトリックとプロテスタント)
どうか、あなたがた自身と群れ全体とに気を配ってください。聖霊は、神が御子の血によって御自分のものとなさった神の教会の世話をさせるために、あなたがたをこの群れの監督者に任命なさったのです。



 もしかすると、問題なのは新改訳聖書のほうなのかもしれません。

 私見になりますが、私としては、この句は聖書に頻繁に見られる意図的な省略の一例であるように思います。イサクの例を見てみましょう。



創世記 24:51, 59, 65

◇ 新世界訳参照資料付き聖書 ◇ (エホバの証人)
さあ,リベカはあなたの前にいます。彼女を連れて行って,エホバの語られたとおり,あなたのご主人の子息の妻にならせてください」。
そこで彼らは自分たちの姉妹リベカとその乳母,またアブラハムの僕とその一行を送り出すことにした。
そして僕にこう言った。「野を歩いてわたしたちを迎えに来るあの方はどなたですか」。すると僕は言った,「あの方がわたしの主人です」。それで彼女は頭きんを取って身を覆った。



 65節の「僕」は、59節にあるように「アブラハムの僕」です。51節ではアブラハムの息子イサクのことが「(僕の)主人の子息」と呼ばれています。しかし、65節ではイサクのことが単に「主人」と呼ばれています。つまり、僕である者から見れば、主人の息子は主人も同様だということです。

 続いて、ダビデの例です。



サムエル第一 18:18

◇ 新世界訳参照資料付き聖書 ◇ (エホバの証人)
そこでダビデはサウルに言った,「私は何者なのでしょう。私の親族,私の父の一族もイスラエルでは何者なのでしょう。私が王の婿になるなどとは」。

サムエル第一 22:14

◇ 新世界訳参照資料付き聖書 ◇ (エホバの証人)
そこでアヒメレクは王に答えて言った,「ですが,あなたのすべての僕の中でだれがダビデのように忠実でしょうか。しかも彼は王の婿で,あなたの護衛の長ですし,あなたの家で敬われているのです。



 ここは、サウル王が自分の娘をダビデの妻としようと言っているところです。それに対しダビデは、「王の娘の婿になる」と言うべきところを、「王の婿になる」と言っています。王の娘と結婚することの重みがみごとに強調されています。そのようなわけで、ダビデはこの後も「王の婿」と呼ばれていたようです。

 口語訳聖書は、サムエル第一 18:18はそのまま訳出する一方で、サムエル第一 22:14では「娘」を補っています。



サムエル第一 22:14

◇ 口語訳聖書 ◇ (プロテスタント)
アヒメレクは王に答えて言った、「あなたの家来のうち、ダビデのように忠義な者がほかにありますか。彼は王の娘婿であり、近衛兵の長であって、あなたの家で尊ばれる人ではありませんか。