エホバの証人の聖書

ガラテア 6:18

 ここは和文新世界訳だけでなく、英文新世界訳聖書と新国際訳聖書にも注目する必要があります。

和文新世界訳聖書(エホバの証人)
兄弟たち,わたしたちの主イエス・キリストの過分のご親切が,あなた方の[示す]霊と共に[ありますように]。アーメン。

英文新世界訳聖書(エホバの証人)
The undeserved kindness of our Lord Jesus Christ [be] with the spirit YOU [show], brothers. Amen.

新国際訳聖書(ファンダメンタル)
The grace of our Lord Jesus Christ be with your spirit, brothers. Amen.


 この聖句について、「フリーマインドジャーナル」1994年6月号に掲載された、「新世界訳聖書における改竄」リストはこう解説しています。

あなたの霊』が『あなた方の[示す]霊』に変えられている。
前述のコリント第一 14章の場合と同様、この改竄は、霊の存在よりも霊の行動を強調して、一個人における霊の存在をあいまいにしようとするものである。


 これは、(フリーマインドジャーナルが述べるのところとは違っていながらも、)基礎的なところはコリント第一 14:14-16の場合と同じですので、まずはそちらの方を見るようにしてください。
 ここで共通なのは、「霊」という表現が人の霊を指しているのか神の霊を指しているのか判断が必要だということです。一方で異なっているのは、コリント第一 14:14-16での「霊」が神の霊だったのに対し、この聖句での「霊」は両方の意味を帯びているという点です。
 この聖句の文脈を見ると、ガラテア 5:16以降で「霊によって歩んでゆきなさい」ということが論じられています。このようなことが述べられています。

ガラテア 5:21-22
新世界訳聖書(エホバの証人)
一方,霊の実は,愛,喜び,平和,辛抱強さ,親切,善良,信仰,温和,自制です。このようなものを非とする律法はありません。

ガラテア 6:1
新世界訳聖書(エホバの証人)
兄弟たち,たとえ人がそれと知らずに何か誤った歩みをする場合でも,霊的に資格のあるあなた方は,温和な霊をもってそのような人に再調整を施すことに努め,それと共に,自分も誘惑されることがないよう,おのおの自分を見守りなさい。

 このように文脈を見てみると、ここで述べられている「霊」が、単に人の霊もしくは神の霊を指しているのではないことがわかります。これは神の聖霊に調和した霊であり、人を通して示される神のご性質です。ここには、神の霊が人の中に入って人の霊と調和したときに何が起こるのか、そして何が起こるべきなのかが簡潔に示されています。さらに聖句は、「(6:4)各人は自分の業がどんなものかを吟味すべきです」、また「(6:9)りっぱなことを行なう点であきらめないようにしましょう」と訓戒し、神の霊に調和した霊とは業によって示される霊であるという考えを示します。神の霊はそれを持っている人の業によって示されるということです。
 ここでは、「霊」という語に人の霊の意味だけでなく神の霊の意味も見ることができると思いました。ただ、どちらの意味に読むとしても、その特徴となっているのは、「業によって示される」ということです。また、「あなた方」の複数に対して「霊」が単数なので、複数の人に共通の霊について語っていることがうかがえます。
 これについて、「聖書に対する洞察」はこう述べています。

人は個人個人ある特定の霊を示す場合があるように,グループまたは人々の集団も,ある特定の霊,つまり支配的な精神的傾向を表わす場合があります。クリスチャン会衆は霊において一致し,会衆の頭であられるキリスト・イエスの霊を反映しなければなりませんでした。

 このように文脈を理解すると、新世界訳聖書が「霊」という語に「[示す]」という語を補足した意味がよく分かります。しかし、新世界訳聖書がここで補足の語を付け足したのは、これとはまた別のところに理由があったからのようです。ここを単に「あなた方の霊」と訳出してしまうと、この聖句は信者を守る守護霊について述べているものと誤解する人がたくさんでてきます。その誤読を防ぐために挿入を入れることにし、そのためにどの語を用いるかという課題が出たところで、文脈が絡んできたということのようです。

 もう一つ注目したい点は、英語の“you”です。英語では「あなた」も「あなた方」も“you”となってしまうので、今回のように“your spirit”とあると、“spirit”が単数なので、読者はこれを「あなた」の意味に読んでしまいます。英文新世界訳聖書はこの問題を解決するために、複数形である“you”には特別なフォントを割り当て、電子テキスト表記では全大文字の“YOU”を用いるようにしています。

 フリーマインドジャーナルの主張は相変わらずで、そもそも論点が分かっていないように思います。


 同様の例に、フィリピ 4:23,テモテ第二 4:22,フィレモン 25があります。

テモテ第二 4:22
和文新世界訳聖書(エホバの証人)
主があなたの[示す]霊と共にいてくださいますように。その過分のご親切があなた方と共にありますように。
英文新世界訳聖書(エホバの証人)
The Lord [be] with the spirit you [show]. His undeserved kindness [be] with YOU people.
新国際訳聖書(ファンダメンタル)
The Lord be with your spirit. Grace be with you.

 テモテ第二 4:22については“you”が単数である点が相違となっています。


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