新世界訳
エホバの証人の聖書

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◆ エホバの証人のコラム ◆
#02 宗教の組織化はカルトへの道か



 昔からどの宗教でもそうですが、反対者の書いた本を開くとたいてい見つかるのが組織図です。その宗教の組織がわかりやすく示され、それがピラミッド構造をしていることが指摘されます。組織がピラミッド構造をしているということは、言い換えれば権力が一極に集中しているということです。そこで反対者は、「この団体がいかに危険なものであるかはこの組織図を見るだけでも明瞭である」と述べます。

 しかし、そもそもこの世の中に「ピラミッド構造をしていない組織」というものがどれほどあるでしょうか。会社組織、政府組織、警察組織、ボランティア組織など、こういったものの中にそういうものがどれほどあるでしょうか。
 組織がピラミッド構造をしているというのはごく普通のことです。というより、普通は避けて通れないことです。これを避けるには、組織化自体を半ばあきらめなければならないでしょう。

 そうであるにもかかわらず、これを図の形で示し、もっともらしい説明が加えるだけで、驚くべき効果が生じます。人々はその指摘を聞いてショックを受け、「これはまさしくカルトだ」とか、「こんな危険な宗教は信じられない」などということを考え始めます。
 これは単なるひっかけに過ぎないのですが、私の思うところでは、これに引っかからない人より、引っかかる人の方がはるかに多いようです。昔から反宗教家たちによって使い古されてきた陳腐な手法ですが、今でも効果は抜群です。

 普通、ある程度大きな事をやろうとすれば、責任者を立てることが必要となります。もし責任者がいないなら、無責任な危ない組織として社会から非難されるでしょう。社会から信頼を得ようとすれば、それなりにまともな組織が必要となります。組織が大きくなると一人ですべての責任を負うことができなくなりますので、組織内で権威と責任の割譲が進められ、こうして組織はピラミッド化していきます。しかし、反宗教家の本を読んでいるうちに、それが当たり前だということが分からなくなった方が実に大勢おられるようです。

 一方の宗教側には、組織化はカルト化を避けるものという認識があります。たとえば、宗教団体の成立期には、際立った思想また指導力を持った個人がリーダーとしての手腕を発揮します。ある程度信者が増えてくると、人材も育ってきますので、彼らを選任して委員会からなる指導組織を結成します。こうして、個人がその宗教を統率していた時代は終わります。さらに信者が増えると、地域ごとに組織が分割され、自治が行われるようになります。
 このようにして組織が拡大すると、権力だけでなく責任も分散します。組織自体が分散しているだけでなく、その最高権力も委員会という形で分散しているため、個人に起因する大きな問題が起こりにくくなり、問題が起こっても収拾がつきやすくなります。

 ほとんどどの宗教も、中央権力の委員会化と組織化により、その宗教がカルトになってしまう危険を克服してきました。ところが反対者はそこを突いてきます。ややこしいことだとは思われないでしょうか。

 さて、エホバの証人についてですが、エホバの証人には『統治体』と呼ばれる指導者の共同体があります。また、アメリカには本部組織があります。
 この統治体は、2000年10月7日に組織運営からの離脱を公表しました。これまでは、統治体メンバーの一人が本部の会長となり、他のメンバーが理事になって、本部組織を統括していたのですが、統治体はこの立場を辞し、今後は聖書研究の分野においてのみリーダーシップをとる方針を示しました。さらに、本部も4分割され、それぞれの独立性が担保されるようになっています。
 アメリカやヨーロッパでは昔から、テレビや新聞などが「エホバの証人はカルトか」という話題を盛んに取り上げてきましたが、この時は「エホバの証人が100年に1度の組織改革を行った」ということで話題となり、さまざまな報道と論評が行われたそうです。特に、エホバの証人のことを「組織に隷従するタイプのカルト」と考えている人たちにとって、このことは衝撃的な出来事だったようです。
 その後も、エホバの証人社会内ではいろいろな調整が行われているようです。全般的な傾向としては権力を分散させる様子が見られています。

 一方、日本のキリスト教諸教会内では、個別の教会あるいは小さな教派がカルト化する問題が次々と露見するようになっていて、かなり問題視されています。原因となっているのは、管理の不在です。これらの教会には、資質に問題のある人物が指導的地位に就くことを阻止する仕組みがなく、また、問題を起こした人物を排除する仕組みもありません。
 ある程度大きな教派は自ずとその問題を克服できていると言われています。本部組織が存在するようになって、そこが牧師の任命権を握っているからです。しかし、それは権力の一極集中を意味していて、それはそれでカルト化の問題に繋がってくるわけですから、なかなか難しいところです。

 エホバの証人については、さらに驚くようなことが起こりました。2014年9月1日、エホバの証人の本部と統治体は、エホバの証人の各会衆の長老(教会の牧師)の任命権を放棄しました。今、長老の任命権は各会衆に属しています。
 これはやりすぎかもしれません。とはいえ、この宗教はこの宗教なりの方法でカルト化の問題と戦っているということが言えそうです。