エホバの証人のコラム

#2 宗教の組織化はカルトへの道か


 昔からどの宗教でもそうですが、反対者の書いた本を開くとたいてい見つかるのが組織図です。その宗教の組織がわかりやすく示され、それがピラミッド構造をしていることが指摘されます。組織がピラミッド構造をしているということは、言い換えれば権力が一極に集中しているということです。そこで反対者は、「この団体がいかに危険なものであるかはこの組織図を見るだけでも明瞭である」と述べます。

 しかし、そもそもこの世の中に「ピラミッド構造をしていない組織」というものがどれほどあるでしょうか。会社組織、政府組織、警察組織、ボランティア組織など、こういったものの中にそういうものがどれほどあるでしょうか。
 組織がピラミッド構造をしているというのはごく普通のことです。というより、普通は避けて通れないことです。これを避けるには、組織化自体を半ばあきらめなければならないでしょう。

 そうであるにもかかわらず、これを図の形で示し、もっともらしい説明が加えるだけで、驚くべき効果が生じます。人々はその指摘を受けてショックを受け、「これはまさしくカルトだ」とか、「こんな危険な宗教は信じられない」などと考え始めます。
 これは単なるひっかけに過ぎないのですが、私の思うところでは、これに引っかからない人より、引っかかる人の方がはるかに多いようです。昔から反宗教家たちによって使い古されてきた陳腐な手法ですが、今でも効果は抜群です。

 反対者側は説明をよりもっともらしくするために心を砕き、入手したさまざまな情報で事実を修飾し、文章表現を磨きます。普通、宗教側はこれを無視します。すると反対者はそのことで勢いづき、彼らの心の狭さを責めたりします。これは宗教と反対者とのお約束事で、いつまでたっても終わりません。当然、エホバの証人に対しても同じことは行われています。

 普通、ある程度大きな事をやろうとすれば、責任者を立てることが必要となります。もし責任者がいないなら、無責任な危ない組織として社会から非難されるでしょう。社会から信頼を得ようとすれば、それなりにまともな組織が必要となります。組織が大きくなると一人ですべての責任を負うことができなくなりますので、組織内で権威と責任の割譲(つまり分権)が進められ、こうして組織はピラミッド化していきます。しかし、反宗教家の本を読んでいるうちに、それが当たり前だということが分からなくなった方が実に大勢おられるようです。

 一方の宗教側には、組織化はカルト化を避けるものという認識があります。たとえば、宗教団体の成立期には、際立った思想また指導力を持った個人がリーダーとしての手腕を発揮します。ある程度信者が増えてくると、人材も育ってきますので、彼らを選任して委員会からなる指導組織を結成します。こうして、個人がその宗教を統率していた時代は終わります。さらに信者が増えると、地域ごとに組織が分割され、自治が行われるようになります。
 このようにして組織が拡大すると、権力だけでなく責任も分散します。組織自体が分散しているだけでなく、その最高権力も委員会という形で分散しているため、個人に起因する大きな問題が起こりにくくなり、問題が起こっても収拾がつきやすくなります。

 ほとんどどの宗教も、中央権力の委員会化と組織化により、その宗教がカルトになってしまう危険を克服してきました。ところが反対者はそこを突いてきます。ややこしいことだとは思われないでしょうか。

 最近になってさらに話をややこしくしているのが、「カルトの定義」の発展です。
 カルトの定義はいろいろですが、10年くらい前まではおおかた「特定の指導者に隷従し、反社会的信条を実践する……」と定義されていました。ところが最近では、「組織」という要素を加えた「特定の指導者もしくは組織に隷従し、反社会的信条を実践する……」という定義が増えてきています。

 マイクロソフト エンカルタ 2000ではこう表現されています。

『アメリカでは……今日一般に流通している、組織が未成熟で社会と緊張関係にある宗教集団をカルトとする立場が生まれた。
アメリカのマス・メディアにおいてカルトとされた集団には……サイエントロジーや統一教会など巨大な組織をもつ教団もある。
反カルト運動(における)カルトとは、特定の人物崇拝、集団の閉鎖性、教義や実践の反社会性などを指標とする集団であり、「宗教」とは区別される語である。 』

 「カルトの正体」(初版は「「救い」の正体」)ではこう表現されています。

『カルトとは、ある人物あるいは組織の教えに絶対的な価値を置き、現代社会が共有する価値観……を否定する集団である。』

 これは諸宗教にとってはぞっとする話です。「何をもって“隷従”とするか」とか「何をもって“反社会的”とするか」の定義次第で、組織化した宗教であってもカルトとされる可能性が出てきました。
 宗教には信仰が、信仰には従順がつきものです。反対者としては、この従順を「隷従」と形容しないわけにはいかないでしょう。また、多くの宗教は反社会的とは言わないまでも非社会的な信条を持っています。するとどうなるでしょうか。その宗教は「一般に認められているカルトの定義に照らしてもカルトである」ということになります。
 さらに最近では、「個人の私生活に干渉すること」がカルトの一要件であるとも言われるようになっています。ちまたの諸宗教に「全滅しろ」と言っているようなものです。信者の私生活に干渉する力のない宗教など、もはや宗教とは呼べないでしょう。

 宗教に関する常識が、また宗教らしくあることが宗教を苦しめる時代がやってこようとしているようにも思います。そのうち、宗教が宗教である度合いに応じて社会から制裁を受ける時代がやってくるのかもしれません。

 さて、エホバの証人についてですが、エホバの証人には『統治体』と呼ばれる中央権力機構があります。
 この統治体は、2000年10月7日に組織運営からの離脱を公表しています。これまでは、統治体メンバーの一人が法人組織の会長となり、他のメンバーが理事になって、エホバの証人組織を総括していたのですが、統治体はこの立場を辞し、今後は聖書研究の分野においてのみリーダーシップをとる方針を示しました。
 アメリカやヨーロッパでは昔から、テレビや新聞などが「エホバの証人はカルトか」という話題を盛んに取り上げてきましたが、この時は「エホバの証人が100年に1度の組織改革を行った」ということで話題となり、さまざまな報道と論評が行われたそうです。特に、エホバの証人のことを「組織に隷従するカルト」と考えている人たちにとって、このことは衝撃的な出来事だったようです。

[AP通信の報道/2000年10月9日]

Leaders of the Jehovah's Witnesses have ordered the biggest organizational shake-up since the evangelist sect was incorporated 116 years ago, saying it would help the 5.9-million member group expand worldwide.
The Watch Tower Bible and Tract Society of Pennsylvania, as the group is officially known, had been run by a so-called Governing Body. Now, religious and administrative duties will be divided, with three newly formed corporations running the group's U.S. operations.
President Milton Henschel, 80, and the group's six other board members resigned their posts on Saturday.
"The reason for the changes was both theological and practical," said public affairs director James N. Pellechia.
He said the Governing Body, now relieved of its administrative tasks, would be able to "concentrate more on the ministry of the Word."
Don Adams, a 50-year veteran of the organization, has been named president of the organization, and seven lower-ranking members will make up the new board. Henschel will remain a member of the Governing Body, which will have a rotating chairman rather than a permanent leader.

 こうしてエホバの証人は、宗教上の権威と宗教組織との完全な分離を成し遂げました。宗教の発展としては実に健全な方向です。

 では、あなたは宗教の組織化をどう思われるでしょうか。組織化は宗教の腐敗だと思われるでしょうか。それとも、むしろ組織化は宗教の健全性を促すものと思われるでしょうか。


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