JWPC - Jehovah's Witnesses Press Club
輸血拒否のための法的・技術的情報
継続的委任状について
2001年4月1日更新

ものみの塔聖書冊子協会は輸血を拒否するエホバの証人の権利を保護するために、「医療に関する事前の指示および継続的委任状」を作成しました。
バプテスマを受けたエホバの証人であれば、会衆の書記に依頼してこの継続的委任状と、「アドバンス・ディレクティブ・ガイド(事前の指示に関する手引き)」を受け取ることができます。
以下に、「医療に関する事前の指示および継続的委任状」と「アドバンス・ディレクティブ・ガイド」をいくらか簡略化して掲載します。
(「アドバンス・ディレクティブ・ガイド」で触れられている、「医療上の事前の指示 兼 免責証書」ならびに「身元証明書」については、「「医療上の指示」証書について」の項をご参照ください)

医療に関する
事前の指示および継続的委任状
(1) 私、[ 署名 ] は、正常な判断能力を有する状態にあり、自らの意思に基づき、この文書を作成いたします。第1部には、医療に関する私の指示が述べられています。第2部では、私の指示が医療従事者によって確実に遵守されるよう見届ける代理人を任命していますが、この任務は、私の判断能力が失われた時に開始します。
第1部医療に関する指示
(2) 私はエホバの証人の一人です。私は、自らの真撃な宗教上の信念に基づき(聖書の「使徒たちの活動」15章28, 29節をご覧ください)、同種血(他の人の血液)、および貯蔵された自己血(自分の血液)を、自分の医療上の状態にかかわりなく、いかなる状況のもとでも無条件で、絶対かつ明確に拒否します。これは、医療上の結果のいかんにかかわりなく、全血および血液の主要成分(赤血球、白血球、血小板、血漿)を受け入れないことを意味しています。医療従事者が、私の命や健康を保つためには輸血しか方法がないと考える場合であっても、私は輸血を拒否します。また私は、献血などの目的で自分の血液を前もって貯蔵することも拒否します。
(3) 私は、私が輸血を拒否することを無視したり無効にしたりする権限をだれにも与えません。家族、親族、友人は、私の決定に同意しない場合があるかもしれません。しかしながら、彼らが同意しないとしても、それは、私の確固たる意思を弱めたり、その内容に疑念を生じさせたりするものではありません。それは法的、倫理的に意味を持ちません。拘束力があるのは、私の個人的な選択、決定のほうです。
(4) 私は、自分自身の血液を増やしたり維持したりするため、また失血を回避したり最小限に抑えたりするため、あるいは失われた循環血液量の補充や止血のため、無輸血の代替療法を受け入れ、またそれを要請します。例えば、私は、デキストラン、生理食塩水、乳酸加リンゲル液、ヘタスターチなどの増量剤は受け入れます。
(5) 血液由来の医薬品

(a) 血液の主要成分の分画はいずれも受け入れません。

(b) 血液の主要成分の分画をすべて受け入れます。

(c) その他。この点に関する私の指示を以下に記します。[ 記入 ]
(6) 自己血が関係する医療上の手法。ただし、後で私や他の人に注入する目的のために自分の血液を貯蔵することはしません

(a) 手術中や手術後の治療に際し、自己血の関係するいずれの手法をも拒否します。

(b) 手術中や手術後の治療に際し、自己血の関係するいずれの手法をも受け入れます。

(c) 自己血が関係する手法では、下記のものだけを受け入れます。[ 記入 ]
(7) 延命治療の施行、継続、中止の決定に関して、私は以下の事柄を選択します。(妊婦に関しては7cの後の注記をご覧ください。)

(a) 延命措置を行なわない。つまり、私が現在の医学の知識と技術をもってしても治療不可能な病気に冒され、回復の見込みがなく、死が避けられない末期状態にあるなら、私は延命措置を望みません。したがって、そうした状況のもとでは、私は人工呼吸(換気)、心肺蘇生術(CPR)、チューブによる栄養補給(人工的な栄養または水分の補給)、その他を望みません。しかし、緩和的な治療 ― 痛みを和らげるための治療 ― は望みます。

(b) 延命措置を行なう。つまり、私は、一般に受け入れられている医療の標準の範囲内で、可能な限りの延命措置を施してもらうことを望みます。

(c) その他。[上記(a)または(b)に完全には同意できません。以下の余白に延命治療に関する私の指示を記入します。] [ 記入 ]

妊婦に関する注記 : 私が妊娠しており、胎児に道理にかなった程度の生存の可能性があるなら、胎児のために延命治療を望みます。しかしながら、自分自身や胎児への輸血を拒否する意志に変化はありません。胎児の救命をもはや考慮する必要がなくなった後には、延命治療の施行、継続、中止に関する私の指示が再度拘束力を持ちます。
(8) 医療に関するその他の指示 : [臓器提供に関する意思、現在使用中の薬剤、アレルギー、医療上の他の問題など。] [ 記入 ]
(9) 厚生省は、平成9年4月から、輪血に関する患者の同意を文書で得ることを義務づけ、この手続きを経ない場合には輸血技術料を医療保険の対象としないことを決定しました。このことは、エホバの証人の場合に限らず、基本的に患者の同意なくして輸血を行なうべきではないことを示しています。
(10) さらに、とりわけエホバの証人への輸血に関しては、以下のように権威ある機関による判断が示されています。

1. 日本医師会 生命倫理懇談会の「『説明と同意』についての報告」(平成2年)は、「患者があくまで輸血を拒否するのであれば、それが患者にとってたとい不利であっても、本人の意思によるものであるから、やむを得ないことであり、医師がそれについて法的な責任を負うことはないと考えられる」と述べています。

2. 信教上の理由による輸血拒否に関する判例としては、大分地方裁判所が昭和60年12月2日に決定を下した「昭和60年(ヨ)第169号左脚切断手術断行仮処分申請事件」があります。同裁判所は、エホバの証人の宗教上の信念から輸血を拒否した患者の意思を尊重する決定を下しました。その理由として、患者が「真撃な宗教上の信念に基づいて輸血拒否をして」いることを挙げ、患者の信教の自由に基づきその意思が尊重されるべきであることを認めました。さらに、その上訴審(抗告審)である福岡高等裁判所は次のように述べて、輸血拒否が法律上有効であることを認めました。「医療行為の目的達成のために手術が必要とされる場合であっても、これにつき患者の承諾が必要とされるのであって、このことは、患者の有する自らの基本的人権に基づく自己決定権を尊重する所以にほかならない。したがって、患者が右自己決定権を行使した時は、それが本人の自由な意思に基づくものである限り、右意思は充分尊重されなければなら」ない。(福岡高裁 昭和60年12月18日決定)

3. もう一つの判例は、最高裁判所が平成12年2月29日に「平成10年(オ)第1081号ないし1084号損害賠償請求事件」で言い渡した判決です。この判決は次のように述べて、いかなる場合にも輸血しないという意思表明は法的に有効であり、それに基づく治療は法的に許容されることを認めています。「患者が、輸血を受けることは自己の宗教上の信念に反するとして、輸血を伴う医療行為を拒否するとの明確な意志を有している場合、このような意志決定をする権利は、人格権の一内容として尊重されなければならない」。
判決の示したこの一般原則の論理的帰結に加え、最高裁判決の判決文に、「緊急に救命処置を施す必要がない限り」などの限定条件が付されていないことからしても、患者が輸血を拒否するとの明確な意志を有している場合、緊急時においてもその意志は尊重されるべきであり、それに反する処置をだれであっても施せないことが示唆されています。

4. 平成6年の東京都立病産院 倫理委員会報告には、「胎児の生命を助けるためとはいえ、患者の宗教的信条を無視して患者に輸血を行うことはできない」とあり、妊婦の自己決定権を尊重するよう求めています。

5. 「ブラウン夫人の胎児」事件において、1997年、米国イリノイ州上訴裁判所は、「生まれてくる胎児の益のためだからといって、侵襲的な医療処置に同意するような法的義務を妊婦に負わせることはできない」との判断を下しました。(689 N.E.2d 397[III.App.Ct.1997]) 女性を単に胎児の保育器のようなものとして扱ってしまうことのないように、もしそうするなら、妊婦の人間性を失わせることになりかねないと述べる文献もあります。(Diamond, Echoes from the Darkness : The Case of Angela C.,51U.Pitt.L.Rev.1061,1095[1990])
(11) 以上のことから、私は、この文書に記されている指示が私の医療上の状況にかかわりなく尊重されることを要請します。この指示に反して私に輸血を行なおうとすることは、自己決定権および信教の自由を侵害するものです。
第2部医療に関する代理人の選任
(12) 私は、ここに以下の人を私の医療に関する第1順位の代理人として選任します。[ 記入 ]
(13) 私が選任した第1順位の代理人がその任務を遂行することが不可能あるいは困難な状況にある時には、以下の人が第2順位の代理人として同じ権限をもって任務を遂行するよう選任します。ただし、第1順位の代理人が任務を遂行することが可能になった場合には、専ら第1順位の代理人のみが権限を遂行することになります。[ 記入 ]
(14) この文書の「第1部 ― 医療に関する指示」に記されている、医療に関する私の指示の及ぶ範囲内においては、代理人に決定を仰ぐ必要や理由は全くありません。私は、この文書の「第1部 ― 医療に関する指示」に表明されている意思が医療従事者によって確実に遵守されるよう見届ける権限を代理人に与えます。
(15) 医療従事者たちが、「第1部 ― 医療に関する指示」に述べられている私の表明した意思を尊重することができず、私の意思を実現させるために他の医療従事者に治療を委ねる必要がある場合、私は、「第1部 ― 医療に関する指示」を尊重してくれる他の医療従事者のところに速やかに移送する面で代理人に協力し、援助を与えるよう医療従事者に指示します。そうした状況が生じる場合、私はこの文書の謄本を含め、医療上の記録類すべてを移送先の医療従事者に速やかに移送するよう医療従事者に指示します。
(16) 現時点で有効なのは、この文書に記した医療に関する指示および代理人の選任の条項のほうです。以前に私から代理権を授与されていた代理人がいる場合、私はすでにその代理権の授与を撤回した旨を以前の代理人に通知しました。
(17) この文書の謄本は、原書と同じように有効です。私は、この文書の謄本をカルテに綴じるようお願いします。私は、この文書の謄本を医療に関する私の第1順位および第2順位の代理人に直ちに渡します。
(18) たとえこの文書の一つかそれ以上の記載事項が無効であった場合でも、他の部分の効力に影響しません。
(19) 私は、この文書を作成するのに十分な知的、精神的能力を有しています。そして、この文書の意味を十分に理解し、ここに署名します。[ 署名・捺印 ]
(20) 立会証人の声明 : 私はこの文書に署名した人(本人)を知っています。本人はこの文書の内容を十分理解した上で、私の面前で、この文書に自らの意思で署名しました。
本人の精神状態は健全であり、強要されたり、欺かれたり、不当な影響を受けたりしている様子はありません。私は20歳以上であり、本人とは血縁関係や婚姻関係、養子縁組の関係にありません。また、私は、この文書によって第1順位あるいは第2順位の代理人として選任された者ではありません。[ 署名・捺印 ] [ 署名・捺印 ]

アドバンス・ディレクティブ・ガイド
― 事前の指示に関する手引き ―
 一般的に言って、アドバンス・ディレクティブ(Advance Directive)とは、事前に、もしくは、重い病気や判断能力の喪失により自分で話をすることができなくなることを想定し、各人が医療従事者に説明を行なったり指示を与えたりすることです。これらは大抵、文書によって行ないます。
 あなたに(あなたの子どもに)輸血が施されないようにするため、書面によるアドバンス・ディレクティブが三つあります。「医療上の事前の指示 兼 免責証書」(「医療上の指示」証書と呼ばれるカード)、「身元証明書」、「医療に関する事前の指示および継続的委任状」(以後、「継続的委任状」と呼ぶ)であり、それぞれが特定の目的を果たしています。
「医療上の事前の指示 兼 免責証書」
1.このカードは、自分で話をすることができないような緊急事態において、あなたに代わって意思を伝えるためのものです。カードには、あなたが全血、赤血球、白血球、血小板、血漿を拒否することが明記されています。免責の声明も含められており、緊急時の連絡先を2名記す欄もあります。
 カードは毎年、通常は奉仕会においてカードについて討議された後に入手できます。バプテスマを受けたエホバの証人は、各々1部入手し、家で注意深く記入することができますが、署名は立会証人の前で行なうべきです。
 署名、立会証人の署名、作成日付の記入は、必要ならば群れの司会者の助けを得、次回の書籍研究の後に行なえるでしょう。署名する前に、カードに完全な記載がなされているかどうかを確かめてください。立会証人となる人は、あなたがカードに署名する場面を実際に見守るべきです。
2.「医療上の事前の指示兼免責証書」が完成したならどうすべきですか。 いつでもカードを携帯してください。無意識状態になったとしても容易に発見きれるような形で、それを携帯してください。
カードには、カードの所持者がエホバの証人であることが述べられていますので、バプテスマを受けていない伝道者は、カードの文面を調整し、自分用に事前の指示書を作成できるかもしれません。
「身元証明書」
3.このカードは、エホバの証人を親に持つバプテスマを受けていない未成年者の身元を証明するものです。親の連絡先、子どものために親が道理にかなった範囲で無輸血による代替療法を選択していることが説明されています。子どもはカードを常時携帯するよう勧められています。バプテスマを受けていない親は、自分の子どものために類似のカードを作ることができるかもしれません。そうすれば、他の人たちは、親の意思を知ることができるでしょう。
4.「身元証明書」に加え、クリスチャンの親と若者は、輸血を施されない点で一層の保護を得るために何ができますか。 クリスチャンの若者は、血を取り入れないとの自らの宗教上の信念を明確に確信を込めて説明できなければなりません。親は、子どもが自分の確信を伝える場を持たせるため、子供と一緒に練習を行なえます。― 「ものみの塔」誌, 1991年6月15日号, 18ページをご覧ください。
「継続的委任状」
5.この証書は、二つの機能を果たすことを目的とした文書です。
 第一に、同種血、血液の主要成分の分画、自己血の使用、絶望的な状況のもとで延命治療を行なうかどうかなど、医療上の具体的な指示を書くためのものです。また、他の医療上の指示について何でも含めることができます。あなたが作成する「継続的委任状」は、あなたの判断能力が弱まったり失われたりした時、あるいはあなたが自分の意思を十分に表明できなくなった時に効力を生じます。
 第二に、自分で医療上の意思表明を行なえない時に、「継続的委任状」に記されているあなたの意思が遵守されるよう見届ける人を選任するためのものです、
6.「医療上の指示」証書と「継続的委任状」の両方を作成すべきですか。 そうするなら、輸血を施されないための最善の保護となります。
 加えて、「医療上の指示」証書には含まれていない重要な情報が「継続的委任状」では扱われています。(1)血液と血液の主要成分の分画に関する指示、(2)延命治療中止などの、他の医療上の事柄に関する指示、(3)患者が医療に関する意思表明を行なえない時、患者の意思が確実に遵守されるよう見届ける代理人を正式に選任する備え。あなたの「医療上の指示」証書に、「継続的委任状」をも作成していることを明記することは重要です、例えば、「私は、この証書の内容に沿った医療に関する継続的委任状も作成しています」と書くことができます。
 「継続的委任状」で医療に関する第1順位の代理人および第2順位の代理人に選任したのと同じ人に、「医療上の指示」証書の緊急時の連絡先になってもらうのは賢明なことでしょう。そうすれば、医療に関する代理人は緊急時に連絡を受け、「継続的委任状」の謄本を医療従事者にすぐに渡すことができるでしょう。
7.「継続的委任状」は入院する場合にのみ記入すべきものですか。 いいえ。「継続的委任状」への記入を入院する時まで待つのは賢明なことではないでしょう。その時点で「継続的委任状」に正確に記入することが不可能でないにしても、病気に対する心配や病状のゆえに困難になるかもしれません。「継続的委任状」は医療に関する重要な質問を扱っているゆえ、理性的に準備するためには時間と事前の考慮が求められます。わたしたちのうちだれも、いつ病院に入院することになるか分からないので、前もって「継続的委任状」を作成しておくことは賢明でしょう。― 伝 9:11。箴 22:3。
8.この「継続的委任状」は、通常の委任状とどのように異なっていますか。 通常、委任状は医療上の事柄のためというより、商取り引きや金銭上の事柄のために用いられます。しかし、この「継続的委任状」は、商取り引きや金銭上の事柄のためではなく、医療上の事柄について作成するものです。また、作成者本人の意思能力が失われた後でも書面としての有効性が持続する点で通常の委任状とは異なっています。もしあなたが、通常の委任状をも作成しており、その中に医療に関する指示が含まれているなら、二つの書類に相違が生じていないかどうかを確かめてください。
良心上の事柄
9 .エホバの証人は血液由来の医薬品を受け入れますか。 わたしたちは、『血を避ける』ようにとの聖書の命令が、全血や血液の主要成分(赤血球、白血球、血小板、血漿)の輸血を非としていると信じています。(使徒 15:28, 29) 血液の主要成分の分画に関しては、各々のクリスチャンは聖書によって訓練された自分の良心に従うべきであり、関係する聖書の原則およびエホバとの個人的な関係の双方を意識します。「ものみの塔」誌, 2000年6月15日号, 29-31ページをご覧ください。
10.エホバの証人は自己血を用いた医療処置をどのようにみなしますか。 ただ単に個人的な好みや医学上の推薦に基づいて決定するのではなく、クリスチャンは聖書が何と述べているかを真剣に考慮します。エホバの証人は献血をしませんし、『注ぎ出す』べき自分自身の血液を輸血に備えて貯蔵しておくこともしません。しかし、自己血の関係する幾つかの手法や検査は、明確な神の原則に明らかに反するというわけではありません。したがって、手術中や治療の際に自己血を用いることに関しては、各々のクリスチャンは自分の良心が許すところに従って決定しなければなりません。「ものみの塔」誌, 2000年10月15日号, 30, 31ページをご覧ください。
延命中止に関する決定
11.延命治療中止に関する決定とは何ですか。これは、死に至りかねない病状に関しての決定です。例えば、あなたが回復の見込みのない末期的な疾患になったとしたら、人工呼吸器をつけて生きることや、静脈を通して、あるいは他の人工的な手段で栄養を補給してもらうことを望みますか。あなたの状態に回復の見込みがなくなったとしたら、あなたやご家族が利用できる財政上の手段すべてを治療のために用いることを望みますか。それには、最先端の治療を受けるために遠方の医療機関に移動することも含まれるかもしれません。延命治療中止に関する決定にかかわるこの種の問題は、「目さめよ!」誌, 1991年10月22日号, 3-9ページで論じられています。
12.延命治療中止に関する決定について、前もって考えなければならないのはなぜですか。 延命治療中止について決定しなければならないような事態は突然に、また予期せぬ時に生じ得ます。したがって、そうした問題は前もって考えておかなければ意味がありません。ある人にとって、延命治療中止に関する決定について話し合うのはやさしいことではないかもしれませんが、あなたの意思が分からないとしたら、あなたの配偶者や家族がどれほど難しい事態に直面するか想像してください。あなたは自分の指示を「継続的委任状」に記録することにより、自分の意思を確実に知らせることができます。
医療に関する代理人の選任
13.医療に関する代理人は、「第1部 ― 医療に関する指示」に表明されているあなたの意思が医療従事者によって確実に遵守されるよう見届けます。しかし、「継続的委任状」の「第1部 ― 医療に関する指示」に記されている、医療に関するあなたの指示の及ぶ範囲内においては、だれも改めて代理人に決定を仰ぐ必要はありません。
 例えば、あなたが意識を喪失しているものの、あなたがエホバの証人であることを知っている医師が、命が脅かされる状況のもとでもあなたが輸血を拒否するのかどうか分からないと主張する場合、「第1部 ― 医療に関する指示」に記されている指示はそれに明確に答えています。ですから、代理人はその件に関して何の代理権もありません。むしろ代理人は、あなたの指示に医師の注意を向け、あなたの意思が確実に遵守きれるよう見届けます。
14.医療に関する代理人としてだれを選任すべきですか。 あなたの代理人は、親密な家族の成員や親友など、あなたが信頼し、あなたと親しい関係にあり、あなたの個人的な信条や価値観を理解している人であるべきでしょう。代理人を選任する前に、以下の事柄を自問してください。
 だれかが私の記した指示に異議を申し立てる場合、代理人は私の意思が擁護されるよう見届けることができるだろうか。病院で私の指示が疑問視される場合、代理人はどのように反応するだろうか。
 したがって、代理人を選任する前に、あなたが念頭に置いている人があなたの意思を理解していること、またあなたの代理人として行動する責任を引き受ける意向があることを確かめるため、その人と話し合うべきです。
 だれを代理人として選任するとしても、「継続的委任状」のあなたの指示について話し合ってください。血液の主要成分の分画、手術中や治療の際の自己血の使用に関するあなた自身の決定について説明してください。延命治療に関する決定についても話し合ってください。それらの事柄についてなぜそのように感じるのかについて説明してください。なお、こうした点は未信者の家族が代理人になる見込みがなくても、未信者の家族とも事前に話し合う努力を払っておくのが最善でしょう。
15.会衆の伝道者のための医療に関する代理人として、長老や奉仕の僕を選任することができますか。 できますが、必ずしもそうしなければならないというわけではありません。エホバの証人ではない配偶者を持つ姉妹は、十分な能力を備えた姉妹を自分の代理人として選任したいと思うかもしれません。このように、未信者の感情にも配慮しつつ、最もふさわしいと思える人を選任します。代理人になる見込みのある人も代理人を選任する本人も、「医療に関する代理人の選任」の項すべてを注意深く読むべきです。この情報は、関係者すべてが、医療上の代理人になることの重要性を理解する助けになります。ちなみに、医療に関する代理人は、あなたの意思が遵守されるよう見届けることに対し、法的な責任を問われることはありません。また、あなたの代理人は、あなたの治療費に関する責任を問われることもありません。
「継続的委任状」を作成する
16.あなたは、会衆の書記から「継続的委任状」を入手することができます。
17.「継続的委任状」を作成するに際し、弁護士か医師に補佐してもらう必要がありますか。 いいえ。この手引書は、弁護士や医師の助けを借りずに「継続的委任状」を完成することができるようにするために準備されました。しかし、長老や弁護士や医師を含め、あなたがこの証書を作成するために助けになってくれるとお感じになる人に相談したいと思うなら、自由にそうすることができます。
 長老たちは、バプテスマを受けた年配者やこの書式の重要性を十分に認識できない人たちに近づくことをためらうべきではありません。だれかが「継続的委任状」を作成する上での助けを必要としているなら、長老たちは助けを与えることができますし、医療上の緊急事態が生じる前にそのような人の援助に時間を費やすことにより、自分や他の人たちが多大の時間や心労を経験しないですむようにできるかもしれません。(箴 27:12) 長老たちは同時に、各人が「継続的委任状」に関して自分の決定をしなければならないことを思いに留めておくべきです。
「継続的委任状」を完成させた後
18.原書は安全で、すぐに取り出せる場所に保管してください。すぐに取り出せない恐れのある貸金庫は用いるべきではありません。完成した証書の鮮明な両面コピーをとり、その余白に日付、および「これは原書の謄本に相違ありません」と記し、署名捺印してください。医療に関する第1順位の代理人、第2順位の代理人、かかりつけの医師(完成した「継続的委任状」の謄本の一つをあなたのカルテに添付するよう依頼してください)、加えて、自分の家族の成員や親しい友人に謄本を1部ずつ渡してください。また望むなら、謄本を携帯したり、車のグローブボックスに入れておいたり、会衆の書記に渡しておいたりすることもできます。(それぞれの謄本に小さなメモを添付し、原書の保管場所、謄本の提供先と電話番号を記しておくこともできます。)そして、入院することが分かっている場合には、謄本の一つを医療機関にも提出できるでしょう。
19.あなたの指示と医療に関する代理人の選任について、かかりつけの医師と話し合うべきですか。はい。基本的には、あなたの代理人と話し合うのと同じ情報についてかかりつけの医師と話し合ってください。無輸血手術を行なうために使用でき、受け入れることのできる数多くの代替療法について話し合ってください。(「ものみの塔」誌, 2000年6月15日号, 29-31ページ; 「ものみの塔」誌, 2000年10月15日号, 30, 31ページを参照してください。「目ざめよ!」誌, 2000年1月8日号, 3-10ページと、「血はあなたの命をどのように救うことができますか」, 14-17, 28ページも参照してください。) かかりつけの医師に、そうした事柄を自分の代理人と話し合ったことを知らせてください。医師があなたのことを理解すればするほど、問題が生じる可能性は少なくなるでしょう。
20.毎年、新たな「継続的委任状」を作成する必要がありますか。 可能ならそうすべきです。自分の最新の意思を反映させるため、また医療従事者や他の人々があなたの意思が自発的に表明された強固なものであることに疑問を差しはさむ余地を減らすためにも、「医療上の指示」証書と同様、「継続的委任状」も毎年作成するのが最善でしょう。
21.「継続的委任状」の効力は家族の成員や他の親族によって覆されることがありますか。いいえ。自分の身体に何がなされるかを管理する権利を持っているのはあなただけです。あなたが「継続的委任状」を作成する時点で判断能力があるのであれば、家族の成員や親族が医療に関するあなたの決定に同意しないとしても、それは法的には無意味です。
22.かかりつけの医師や他の医療関係者は、「継続的委任状」に表明されている意思を尊重すれば、法的な責任を負いませんか。負いません。医師や他のすべての医療従事者は、「継続的委任状」に表明されているあなたの意思に調和して行動するとき、法的な責任を負うことはありません。実際のところ、それらの人々はあなたの意思を尊重する法的な義務があります。ですから医療関係者は、「継続的委任状」に反して行動した場合にこそ責任が問われることを気にかける必要があるのです。

注記 : 医療に関する事前の意思表明によって備えをしておくことに加え、自分自身が無輸血手術や無輸血治療を受けることが決まったなら、早めに医師たちとの間で書面による契約を交わしておくことが大切です。会衆の長老たちに依頼するなら、地元の医療機関連絡委員会を通して「輸血謝絶兼免責証書」や「未成年者の無輸血治療に関する申し合わせ」用紙を入手することができます。不測の事態をも考感し、盲腸の手術や出産などにおいても、口約束ではなく書面による医療契約を交わしておくことは知恵の道と言えます。


この「継続的委任状」は患者となったエホバの証人の権利を守るためのものであり、決して医師を威圧するためのものではありません。
むしろこの継続的委任状の内容は、エホバの証人の患者のみならず、医師や病院にも保護が与えられるよう配慮したものとなっています。
ものみの塔聖書冊子協会は、この継続的委任状の作成によりエホバの証人の輸血拒否を巡るトラブルが極力回避されることを望んでいます。

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