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輸血解禁の誤報が世界を駆けめぐる
2000年6月23日更新

2000年6月14日、イギリスのマスメディアが一斉に、「エホバの証人の指導機関は、実質的に輸血を認める決定を下した」と報じはじめ、そのために世界中で混乱が生じています。
日本においても、読売新聞2000年6月16日朝刊が6面において、『「エホバ」輸血認める−英で報道』という記事を掲載し、こうして混乱が波及しています。
今回の混乱は、エホバの証人の最高機関である統治体が、ヨーロッパにおいて2000年4月に通知した、排斥と断絶に関する手続き上の変更の決定に対する誤解が基礎となっています。
この決定および通知は、信者が故意に輸血を受け、後に後悔もしないといった、当人がすでに棄教していることが明らかな事例においては、審理によって援助を行う、もしくは排斥除名するという従来の手順に変更を加え、今後は会衆が手続きを始める必要はないこととするという内容のものです。
その人は、手続きを経ることなく、自動的に信者としての立場を失うことになります。
これは、援助のための手続きを伴わない、より厳しい処分になります。
とはいえ、この手続きに関わる用語に関する誤解のために、今回の誤報道は生じました。
棄教に関しては、エホバの証人は二つの用語を使い分けます。
ひとつは、「排斥」、もう一つは「断絶」です。
「排斥」とは、ある証人が罪を犯した場合、エホバの証人の会衆が、事実の確認と援助のための「審理委員会」を結成し、それにより援助を行ったにもかかわらず、当人が悔い改めに至らなかった場合に行われる除名処分を指します。
一方、「断絶」とは、会衆の側の手続きを経ることなく、当人が自らの意志によって棄教を表明し、そのための手続きも信者本人が行うことを指しています。
両者の違いは、援助が行われるかどうか、また、除名が自発的であるかどうかにあります。
今後、エホバの証人が輸血を受け、後悔していないような場合には、その人は「(追放されたのではなく)自ら離れた者」、「援助も審査も必要としない者」とみなされます。
しかし、マスメディアはこの語の意味を十分に把握していなかったため、この手続き上の変更を、「実質的な排斥処分の撤回」と見なしたようです。
さらに、この誤報道に際して、イギリスのものみの塔協会の報道官が行ったコメントも、さらなる誤報の原因となりました。
報道官は、「もしも輸血を受けたエホバの証人が、後になってその行為を悔やむなら、今後も当人がエホバの証人を続けていけるよう、会衆による援助が行われる」と述べました。
つまり、その場合は、これまで、輸血を受けたすべてのエホバの証人に対して行われていた、場合によっては排斥に至る手続きが行われることになります。
悔い改めと援助に関するこのような手順は、本来、輸血を受けたエホバの証人すべてにさしのべられていました。
しかし、イギリスのマスメディアはこの説明を、「新しい方針」の一部と見なしてしまったようです。
読売新聞はこのように報道しています。

「同スポークスマンは、「輸血手術を受けた信者が後で懺悔すれば、教団は救いの手を差し伸べる」と語り、事実上の輸血解禁を明言した」。

このような誤報道に対し、ものみの塔協会は公式の声明文を発表し、「これは手続き上の変更ではあるが、結果は同じであり、輸血を受けた本人はエホバの証人とは見なされなくなる」、また「後悔している信者に対する手続きは変更されていない」と述べています。

エホバの証人の内部文書である、「わたしたちの奉仕の務めを果たすための組織」は、従来からこのように規定しています。

「もしその悪行者が真に悔い改めており、「悔い改めにふさわしい業」などを行なうなどしてそのことを示しているならば、監督たちの主な努力はいつでも、その人を立ち直らせることに向けられます。・・・こうして、その悪行者は、それ以後『自分の足のためにまっすぐな道を作る』ように助けられることでしょう」。

「断絶ということばは、会衆のバプテスマを受けた成員でありながら、クリスチャンとしての自分の立場を故意に放棄し、会衆を退けて、もはや自分がエホバの証人の一人として認められる、または知られることを望まないと述べる人の取る行動に適用されます。・・・信仰を否認し、エホバへの崇拝を故意に放棄して、自ら関係を断絶した人は、排斥された人と同じように見なされます」。

このことからも分かるように、今回、統治体が行ったのは、あくまで「手続き上の変更」であり、教理には何の変化もありません。

奇しくも、アメリカのものみの塔協会本部は、翌日、2000年6月15日に、「エホバの証人は輸血に関する宗教的信条を再確認する」と題する文書を発行しました。
これは、すでに印刷、配布されている、「ものみの塔」誌2000年6月15日号の内容を、同日付けでマスメディアに対して通知するものです。
このことにより、今後、この誤報道による混乱は収束に向かっていくものと期待されています。

資料
(1) 2000年6月16日(金)読売新聞朝刊6面報道記事(一部地域)
「エホバの証人」輸血容認に転換
英で報道
【ロンドン15日=渡辺覚】
独自の教義で輸血を禁じ、日本をはじめ各国の医療機関でトラブルも引き起こしているキリスト教系の宗教団体「エホバの証人」(本部・米ニューヨーク)が、信者の輸血手術を認める方針に転換したことが、十五日までに明らかになった。教団の英在住スポークスマンが、英BBC放送に語った。
 同スポークスマンは、「輸血禁止は現在も教義上の原則」としながらも、「輸血手術を受けた信者が後で懺悔すれば、教団は救いの手を差し伸べる。(輸血の事実だけで)破門することはない」と語り、事実上の輸血解禁を明言した。
 十四日付の英紙タイムズによると、この新方針は、教団本部で行われた十二人の教団首脳の秘密会議で決定され、今後、「生死を左右する状況にある信者」に適用されるという。
 エホバの証人は、聖書の「血を食べてはならない」とする教義を厳守し、信者が輸血手術を拒否するトラブルが各国で問題化している。日本では今年三月、同意のないまま行われた輸血手術をめぐり、最高裁が信者の「拒否権」を認める判断を下し、患者の救命を第一とする医療現場に波紋を広げた。
(2) 2000年6月16日(金)読売新聞朝刊6面報道記事(他の地域)
「エホバ」輸血認める
英で報道
【ロンドン15日=渡辺覚】
独自の教義で輸血を禁じ、日本をはじめ各国の医療機関でトラブルも引き起こしているキリスト教系の宗教団体「エホバの証人」(本部・米ニューヨーク)が、信者の輸血手術を認める方針に転換したことが、十五日までに明らかになった。教団の英在住スポークスマンが、英BBC放送に語った。同スポークスマンは「輸血手術を受けた信者が後で懺悔すれば、教団は救いの手を差し伸べる」と語り、事実上の輸血解禁を明言した。
(3) 2000年6月23日(金)読売新聞朝刊8面訂正記事
「エホバ」輸血認めず
英紙報道に反論
【ロンドン22日=渡辺覚】
「エホバの証人が信者の輸血手術を解禁する方針」などとした十四日付英紙タイムズの記事をめぐり、宗教団体「エホバの証人」英国支部は二十一日、同紙に投書を寄せ、「自分の意志で輸血を受けた者は、信者とは見なされない」と、これまでの教団の方針に変更はないと説明した。
 投書の中で同支部は、教団が先ごろ、「手続き上の変更」を行い、輸血を受けた信者に対して従来の除名処分を取りやめる方針を採用した点を同紙が取り上げ、「誤った印象を抱かせる」記事になったと指摘した。

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