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2000年6月14日、イギリスのマスメディアが一斉に、「エホバの証人の指導機関は、実質的に輸血を認める決定を下した」と報じはじめ、そのために世界中で混乱が生じています。 | |
日本においても、読売新聞2000年6月16日朝刊が6面において、『「エホバ」輸血認める−英で報道』という記事を掲載し、こうして混乱が波及しています。 | |
今回の混乱は、エホバの証人の最高機関である統治体が、ヨーロッパにおいて2000年4月に通知した、排斥と断絶に関する手続き上の変更の決定に対する誤解が基礎となっています。 | |
この決定および通知は、信者が故意に輸血を受け、後に後悔もしないといった、当人がすでに棄教していることが明らかな事例においては、審理によって援助を行う、もしくは排斥除名するという従来の手順に変更を加え、今後は会衆が手続きを始める必要はないこととするという内容のものです。 | |
その人は、手続きを経ることなく、自動的に信者としての立場を失うことになります。 | |
これは、援助のための手続きを伴わない、より厳しい処分になります。 | |
とはいえ、この手続きに関わる用語に関する誤解のために、今回の誤報道は生じました。 | |
棄教に関しては、エホバの証人は二つの用語を使い分けます。 | |
ひとつは、「排斥」、もう一つは「断絶」です。 | |
「排斥」とは、ある証人が罪を犯した場合、エホバの証人の会衆が、事実の確認と援助のための「審理委員会」を結成し、それにより援助を行ったにもかかわらず、当人が悔い改めに至らなかった場合に行われる除名処分を指します。 | |
一方、「断絶」とは、会衆の側の手続きを経ることなく、当人が自らの意志によって棄教を表明し、そのための手続きも信者本人が行うことを指しています。 | |
両者の違いは、援助が行われるかどうか、また、除名が自発的であるかどうかにあります。 | |
今後、エホバの証人が輸血を受け、後悔していないような場合には、その人は「(追放されたのではなく)自ら離れた者」、「援助も審査も必要としない者」とみなされます。 | |
しかし、マスメディアはこの語の意味を十分に把握していなかったため、この手続き上の変更を、「実質的な排斥処分の撤回」と見なしたようです。 | |
さらに、この誤報道に際して、イギリスのものみの塔協会の報道官が行ったコメントも、さらなる誤報の原因となりました。 | |
報道官は、「もしも輸血を受けたエホバの証人が、後になってその行為を悔やむなら、今後も当人がエホバの証人を続けていけるよう、会衆による援助が行われる」と述べました。 | |
つまり、その場合は、これまで、輸血を受けたすべてのエホバの証人に対して行われていた、場合によっては排斥に至る手続きが行われることになります。 | |
悔い改めと援助に関するこのような手順は、本来、輸血を受けたエホバの証人すべてにさしのべられていました。 | |
しかし、イギリスのマスメディアはこの説明を、「新しい方針」の一部と見なしてしまったようです。 | |
読売新聞はこのように報道しています。
「同スポークスマンは、「輸血手術を受けた信者が後で懺悔すれば、教団は救いの手を差し伸べる」と語り、事実上の輸血解禁を明言した」。 このような誤報道に対し、ものみの塔協会は公式の声明文を発表し、「これは手続き上の変更ではあるが、結果は同じであり、輸血を受けた本人はエホバの証人とは見なされなくなる」、また「後悔している信者に対する手続きは変更されていない」と述べています。 | |
エホバの証人の内部文書である、「わたしたちの奉仕の務めを果たすための組織」は、従来からこのように規定しています。
「もしその悪行者が真に悔い改めており、「悔い改めにふさわしい業」などを行なうなどしてそのことを示しているならば、監督たちの主な努力はいつでも、その人を立ち直らせることに向けられます。・・・こうして、その悪行者は、それ以後『自分の足のためにまっすぐな道を作る』ように助けられることでしょう」。
「断絶ということばは、会衆のバプテスマを受けた成員でありながら、クリスチャンとしての自分の立場を故意に放棄し、会衆を退けて、もはや自分がエホバの証人の一人として認められる、または知られることを望まないと述べる人の取る行動に適用されます。・・・信仰を否認し、エホバへの崇拝を故意に放棄して、自ら関係を断絶した人は、排斥された人と同じように見なされます」。 このことからも分かるように、今回、統治体が行ったのは、あくまで「手続き上の変更」であり、教理には何の変化もありません。 | |
奇しくも、アメリカのものみの塔協会本部は、翌日、2000年6月15日に、「エホバの証人は輸血に関する宗教的信条を再確認する」と題する文書を発行しました。 | |
これは、すでに印刷、配布されている、「ものみの塔」誌2000年6月15日号の内容を、同日付けでマスメディアに対して通知するものです。 | |
このことにより、今後、この誤報道による混乱は収束に向かっていくものと期待されています。 | |
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